ハードもソフトも!期待に応えて継続する信頼関係を築く
まずは、事業企画本部のミッションと具体的な事業内容を教えてください。
事業企画本部のミッションは、社会のニーズを先読みし、新たなビジネスを創出することです。歴史を振り返ると分かりますが、近年は数十年に1回くらいのペースで、日々の暮らしを大きく変えるような大きな転機が訪れています。日本でいうと、1950年代後半から70年代半ばにかけての高度経済成長や、1990年代半ば以降のインターネット普及は一大転換期であり、多くの新ビジネスを生み出しました。そして今、アフターコロナの時代が幕開けし、社会が大きく変化しています。
USEN-ALMEXは1966年の創業以来、戦略転換点を巧みにとらえ、常に社会が求める新たなビジネスを創出。時代の流れに応じて柔軟に主力製品を変えながら、成長を続けてきた企業です。まもなく創業から60年になりますが、まさに挑戦の連続でした。創業より挑戦し続けてきた先輩たちに倣い、私自身も新卒で入社してから、いくつもの新しい挑戦に取り組んできました。
例えば1990年代初めに九州の温泉地にオープンした温浴施設で、当時まだ珍しかった館内キャッシュレスシステムを開発して導入しました。「こんなの作れないかな?」と渡されたA4サイズの企画書1枚をもとに、ホストとなるソフトウェアからリストバンドを自動回収する精算機まで、試行錯誤しながら開発したのです。私たちにとって、初めての挑戦が連続する日々でした。自動精算機の開発担当だった私は、紆余曲折を経て何とか期日までに納品したはいいものの、強度の確認不足で精算機のメカ部品が壊れてしまって大慌て……。運用が止まらぬよう手作業で対応しつつ、急いで改良を施したということもありました。当時は我々の技術力が不足していたこともあり、失敗を繰り返しながらも何とかお客さまにご迷惑をおかけしないよう学習を重ねる毎日でした。
今でこそ自動精算機はUSEN-ALMEXの主力製品に成長しましたが、こうして技術を磨いてきた日々があったからなのです。「ソフト屋になるな。これからの時代は、ハードもソフトもできてこそ本当の技術者になれる」。これは、創業者である当時の社長から言われた言葉です。USEN-ALMEXは、この言葉の通りITに関わることは必要に応じて何でも取り組んできました。その結果、お客さまの課題に応えるさまざまな製品やサービスが誕生しました。企画・開発・製造・販売・保守に至るまで一気通貫の商売を磨いて、お客さまとの継続的な関係を育んできたわけです。現在の主力商品の多くは、そのお客さまのニーズを形にしてきた証であり、現在も多くのご支持を賜っております。
時代の転換期こそ、成長のチャンス。たゆみない挑戦を
今はVUCAの時代(先の読めない時代)といわれますが、どのように立ち向かっていますか?
日本社会は今、非常に大きな転換期を迎えていると思います。ただし、これからの日本社会は悪くなる、という未来は想像していません。大きく変化していくという意味です。USEN-ALMEXのミッションは、「テクノホスピタリティを世界へ」です。ITで社会をよりよくしていくのが我々の使命です。転換期の今だからこそ、我々の果たす役割はますます高まっているといえるでしょう。
例えば、当社の主力分野である医療業界や宿泊業界でも、少子高齢化による人手不足という構造的問題の影響が現れています。ならば、当社が得意とするテクノロジーの力でお客さまの課題を解決し、安心で快適なホスピタリティを実現する。これこそ、我々が貢献できることです。
USEN-ALMEXは、現在さまざまな挑戦を始めています。一例として医療業界では、病院の医事DXを進めています。医学DXや医療DXの取り組みはよく耳にしますが、我々が取り組むのは医療事務のDXです。医療を支える事務プロセスを革新して生産性を向上させて、医療現場を支える仕組みづくりに挑戦しています。
宿泊業界に関しても、インバウンド客(訪日外国人)と外国人人材雇用の増加を見据えたアップデートを続けています。今まで有人対応していた業務も自動チェックイン機でカバーできるようにしつつ、多様性を増すお客さまや従業員の皆さまが活用しやすいシステムに進化させていくことで、慢性的な人材不足の解消に貢献する取り組みを進めています。
関係する皆さまと共に挑戦する「パートナー」でありたい
医療・宿泊ともに競合が多い業界ですが、USEN-ALMEXの強みはどのような点ですか?
IT企業っぽくない表現ではありますが、泥臭い「野武士」のような集団、という点でしょうか(笑)。先ほどお話したリストバンド型精算機開発の件が象徴的ですが、新しい領域にも失敗を恐れず、諦めずに挑戦し続けることで、お客さまからの信頼を積み重ねてまいりました。
例えば、長年お付き合いのある大手ビジネスホテルチェーンのお客さまは、ビジネスホテル事業を強化するにあたり、当社から私を含め2名を欧州視察に同伴させてくれたことがあります。当時の日本からでは想像できなかった、キャッシュレスのB&B(ベッドアンドブレックファースト)ホテルの実態を学ぶ機会を与えてくれました。その後、このお客さまを含めた多くのホテル関係のお客さまと試行錯誤を繰り返しながら、新たなビジネスモデルを一緒に作り上げてきました。それが、今の日本の宿泊を支える宿泊特化型・宿泊主体型ホテルと呼ばれるホテルです。
お客さまの店舗が増えて成長していく姿は、当社にとっても大きな喜びです。この貴重な経験を経て、今でも多くのお客さまと強い信頼関係で結ばれています。これは、当社の製品やシステムの評価のみならず、前向きに挑戦し粘り強く向き合うUSEN-ALMEXの泥臭い姿勢を、ご評価いただいた結果だと自負しています。これからも、お客さまをしっかりと支える存在であり続けたいです。
当社は、ファブレスメーカーです。さまざまな製品やサービスを開発・製造していく上で、多くの仕入先・委託先の方々にもお世話になってきました。関係する皆さまと、共に挑戦してきたからこそ、今があります。お客さまならびに関係する皆さまとは、「パートナー」と呼べる間柄で、これからも新たな挑戦に一緒に取り組んでいきたいと考えています。
「テクノホスピタリティを世界へ」
~ミッションの浸透で社内の自律化を目指す
新規ビジネスを創出するには、社内の連携も重要です。どのように取り組んでいますか?
部署の垣根を超えて、「テクノホスピタリティを世界へ」という企業理念をもとに、意味のある仕事を習慣化していくことが大切です。業務を分担して進めていると、どうしても各自が目の前の仕事に集中してしまい、その仕事の本質を見失いがちです。例えば、製品やシステムの開発に携わる仕事では、開発完了がゴールであるかのような誤解をしてしまうことがあります。
しかし、私たちUSEN-ALMEX本来のミッションは「テクノホスピタリティを世界へ」。つまり、テクノロジーの力でお客さまの課題を解決して、ホスピタリティあふれる社会を実現することです。この本質を真芯で捉えて、行動変容することが大切です。例えば、リリース後のお客さまが喜ぶ姿をイメージして、日々行動する習慣があればどうでしょう?
社員一人ひとりが目先の目標にとらわれ過ぎることなく、ミッション実現という目指す目的が合致していれば、各々が自律的に考え、行動し、よい結果につながっていきます。とはいえ、理念は案外忘れられがちで、日々の活動で意識することは少ないですよね。私たち事業企画本部は違います。飲み会の締めの言葉として「テクノホスピタリティを世界へ」を唱和しています(笑)。
ボトムアップ体制への刷新で、さらなる進化を目指す
取締役として、今後USEN-ALMEXをどのように進化させていきたいですか?
目指しているのは、自律型な逆三角形型組織です。今まで多くの企業は、上層部が決めた経営方針に社員が従うというピラミッド型組織の構図が定着していました。必ずしも、トップダウン型が悪いわけではありません。ただ、会社が成長するにつれ、現場の社員が自ら考え、自ら活動する重要性が増しています。日々お客さまと接し、現場で働くのは社員です。社員から「私は、こうやってビジョンを体現したい」、「私はこの仕事でミッションを実現していく」といった自律的な行動こそが、組織の原動力になります。
そのためには、一般的なピラミッド型の組織(多数の社員が下、少数の役職者が上にいる構造)をひっくり返して、役職者が下から社員を支える逆ピラミッド型の組織に作り替えていくほうが理にかなっています。社員が自由闊達に議論し、積極的に新しいことに挑戦できる環境です。私たち役員がサポートしていくことで、USEN-ALMEXはより強く、より可能性に満ちた組織に進化していけるはずです。
逆ピラミッドの最上段、つまり最前線には現場の社員がいます。その上にいるのがお客さまです。現場の社員がイキイキと働く会社が、よい会社です。お客さまと接点が多い現場社員のエネルギーが高ければ、自ずとお客さまにもその活力が伝わるでしょう。
私自身、入社以来30年以上にわたって当社の歩みとともに成長させてもらいました。だからこそ、今以上に組織をよりよくするイメージを描くことができます。そのために、社員やお取引先さまが幸せになる環境を整えていくことが私の役割です。自律的で能動的な活動を支持して薫風たなびく企業文化を尊び、よい企業風土を目指し耕すがごとく環境を整備し、皆さまから今日も明日も必要とされる企業に磨き上げていく。周囲から自然に「よい会社だね」と言われるべく、取り組んでまいります。