調達からアフターサービスまでの品質管理を徹底
まずは、ロジスティクスサービスソリューション本部(以下、LS本部)のミッションと主な業務内容について教えてください。
LS本部のミッションは、一言で申し上げると「安定調達と安定供給、そして安定稼働させるための品質管理を徹底し、結果として顧客満足度を高めること」です。現在、部内には計5つの部署(購買部・製造部・サービス運用部・CS品質管理部・インフラシステム部)があり、計130名体制で部品・材料の調達から協力工場での製造、完成した製品の保管、キッティング、出荷・配送、納品後のシステム運用やアフターサービスまでを一気通貫で行っています。
USEN-ALMEXの製品はいずれも高機能で長期間の使用を前提としており、製品によっても異なりますが、お客さまは少なくとも5~7年は当社の製品を使い続けるつもりでご購入くださるため、当社はそのご期待に十分お応えできるだけの品質の製品や保守・サービスを提供しなくてはなりません。
私たちはQMS(ISO9001)を取得し、品質保証体系図(製品実現のフロー) に基づき、企画から販売・保守までのプロセス管理を通して品質向上に努めています。例えば、我々の主力製品である自動精算機は特に長期間にわたって使用されることが多いので、企画段階から販売した後の保守やサポートの計画を立てることが極めて重要になります。製品の企画・開発自体はR&D本部が主管として行いますが、LS本部からも担当者が必ず参画して、製造する工場の選定や、製造した後の製品在庫管理やキッティングはどうするのか、修理などのアフターケアはどうするのかなどを厳しく検証することを行います。
そのような取り組みを通して、私たちLS本部では、お客さまが安心して使っていただけるように、バリューチェーン全般にわたって適切な品質管理を行っています。
多様なステークホルダーとの連携を育むIntegrity(誠実さ)
取り組みが多岐にわたりますが、スムーズに業務を進めるために心がけていることはありますか?
LS本部として普遍的に変わらず問い続けていることは、「適ザイ適所」です。本来の言葉は適材適所ですが、当本部が考える“ザイ”は、人材はもちろん、財、在の意味を持ちます。ヒト・モノ・カネをすべて適切にしていくべきだと考え、どんな資材にするべきか、それを購入するための支払い計画は適切か、買った結果としての在庫をどう適正化するか、そして何よりそれを管理していく人材の成長が促されているか、を意図しています。
そして、そのための行動として「適切な『製品・サービス』を、適切な『時』に、適切な『価格』で、適切な『場所』に提供するためのあらゆる品質を確保すること」も大切にしています。品質(Quality)とコスト(Cost)と納期(Delivery)はトレードオフであり、当本部ではこのQCDにセキュリティ(Security)のSを加えた、QCDSバランスを保ちながら、製品であれサービスであれ、お客さまに安全かつ予定通りにお届けすることを重視しています。
これを実現していくには、サプライヤーだけでなくユーザーなどすべてのステークホルダーとの意思疎通が欠かせませんから、常に5ゲン主義(現場・現物・現実・原理・原則)のもとで、USEN-ALMEXがVISIONとして掲げる「Integrity」(誠実さ)をもって取り組むことが必要と考えています。
特に海外のステークホルダーとの関係では、Integrityの大切さを実感することが多いですね。例えば、我々の製品は海外のサプライヤーに生産委託しているケースもありますが、海外と日本では文化的にどうしても「品質」についての認識が違うなと思うことがあります。一般的に日本のメーカーは「長く使えるように品質の高い製品を作ろう」というスタンスであるが故に納期や価格も高くなりがちです。海外では合理的かつ効率的重視なところが多く、使用期間も割り切り「価格も安く、大量に作れば一定数の不良率はやむを得ない。もし初期に不具合があれば、予備の製品を多めにつけるから、壊れたら取り換えてね」というスタンスのメーカーが少なくないのです。
では、こちらの期待通りの製品を作ってもらうにはどうしているかというと、厳密な契約と仕様の取り交わしはもちろんのことですが、やはり最終的には直接工場まで出向いて、現場で面と向かって話し合うしかないと思っています。決して相手も不良品を作ろうとしてやっているわけではなく、それぞれに環境や、またスキルなど、理由があってそうなっている。なので、ただ要求を繰り返すだけでなく、現地でしっかりと見て、聞いて、感じて、把握した上で要望や現場にあった提案を繰り返していくことが本当に大切なことだと思っています。
そして実際に商品が使われている現場に連れて行ったり、写真を見せたりしながら「あなたの工場で作った製品は、日本のホテルでこんなふうに使われて、ホテルの従業員やお客さまの役に立っていますよ。でも、もし不具合が起こったら、ホテルの方もこの商品を使うお客さまもこんなに困るんですよ」と、先方の社長や工場長、ひいては従業員とも我々と同じ目線でゴールを共有することをします。すると、双方に「同じゴールに向かって取り組もう」という意識が芽生え、USEN-ALMEXの商材のみを製造する専用のラインや、高いスキルを備えた工員を割り当てていただいたこともあります。結果として工程内不良は大幅に減少し、こちらの期待通り、もしくは期待を上回る高品質な製品づくりが実現できると信じています。リモート会議やメールのやりとりにはない「そこにある現場感」を大切に、これからも部署や会社、国を跨いだ信頼関係を構築してお客さまに長く安心して使っていただける製品・サービスの安定供給に取り組んでいきたいと考えています。
CS品質管理部を設立し、VOCファーストの品質向上に挑む
2024年に従来のテクノサービス部を刷新し、CS品質管理部を立ち上げました。どのような狙いがあるのでしょうか?
テクノサービス部からCS品質管理部への刷新は、さらなる品質管理の徹底を通じたCS(カスタマーサービスと顧客満足度)向上を目指して行ったものです。これまでもUSEN-ALMEXはあらゆる取り組みで品質向上に努めてきました。しかし、市場に投入された後の製品やサービスに対する管理・監視機能についてはまだまだ課題も多く、お客さまからのお叱りを受けることも多々あります。そこで今回、親会社であるUSEN&U-NEXT GROUPと連携したカスタマーサポート部門にコールセンターを統合することによって、ノウハウの共有によるレベルアップや効率化はもちろんですが、VOC(Voice of Customer=顧客の声)を見える化し、その結果をしっかりとUSEN-ALMEXで受け止め、各プロセスでの改善を早く強く進めていくことを牽引していく部門として、CS品質管理部を発足させました。
CS品質管理部は、会社全体の品質保証体制の仕組みを管理監視する品質保証部と密に連携し、下流のフィールド技術者の教育やインシデントの管理、プロセス改善を通して市場品質の強化を推進するとともに、上流(R&D本部)、中流(LS本部)の品質管理部門に対しても改善を求めることで、最終的にCSの向上を目指して取り組みを強化していきます。
ロジスティクスは「第三の利潤源」
品質管理以外では、今後どのようなことに力を入れていきますか?
一般的に物流は企業にとって「第三の利潤源」といわれています(第一の利潤源=売上拡大、第二の利潤源=製造・仕入原価の低減)。USEN-ALMEXでもこれまで、倉庫保管+キッティングといった付加価値の提供や、輸送拠点の集約、製品輸送トラックの復路便有効活用など、さまざまな取り組みを通じて、営業利益とは別ベクトルの利潤をもたらしてきました。近年は労働力不足が深刻化し、いわゆる2024年問題など物流を取り巻く環境はますます困難になっていますが、グループ会社間の連携を通じて既存リソースの利活用を進め、質・量の向上、または作り方、標準化などの施策によるコストリダクションと在庫消化の徹底、そして品質を含む徹底的なロスの排除をしっかり果たしていきたいですね。
困難に立ち向かう「現場力」で、より強い企業を目指す
新たな試みを進める上で欠かせない人材の確保・育成には、どのように取り組んでいきますか?
ロジスティクスの専門人材の新規獲得はかなり難しいこと、また当社製品の特異性も考えると、既存社員(部署間のローテーションも含めた)の育成に力を入れていきたいと考えています。その際に心がけているのが、先ほども申し上げた「適ザイ適所」。一人ひとりの適性をしっかり見極めて、適性が発揮できる部署やポジションで活躍できるよう、体制の整備に努めていきます。
私自身も約20年前にUSEN-ALMEXに中途入社して実感したのですが、USEN-ALMEXの社員には、ここぞのタイミングで火事場の馬鹿力(=現場力)を出す、不思議な魅力があるんですよね。普段は穏やかで真面目なタイプの社員が多いですが、いざという時には驚くほどの現場力で社員が一丸となって課題に挑み、とてもこの短期間には不可能と思えたことを解決していく…、という場面をこれまで何度も目にしてきました。あの素晴らしい現場力の源は、やはり自社へのエンゲージメント、つまりは製品や技術に対する誇りや愛情だと思います。これからも、より高品質な製品、世の中の役に立つ製品づくりを通じて社員のエンゲージメントを高め、課題に立ち向かう「現場力」を蓄えていきたいですね。そして、USEN-ALMEXをより強い企業へと進化させていきたいと考えています。