組織力と総合力を発揮し
一気通貫のニーズに応える
顧客と幅広い接点を持つマーケティングセールス部門として、顧客のニーズをどのように捉えていますか。
マーケティングセールス(MS)部門全体を見ると、受注件数の大半は既存のお客さまからの受注が占めています。例えば、システムの拡張やリプレイスといった内容が多く、その点では当社の強みの1つであるカスタマイズの力が期待されていると感じます。一方では、当社の祖業であるホテル分野のみならず、ホテルシステムの発想を転換し、構築したシステムに対して医療機関やゴルフ場などからの相談や依頼も増えていきました。
新規の相談が増えている背景にはどのような要因がありますか。
トリガーは、コロナ禍によって非対面・非接触のニーズが高まったことです。当社はホテル向けのPMS(Property Management System)の提供からはじまり、その後、受付や精算業務を自動化するKIOSK端末へと展開してきました。その過程で非対面ニーズに応えるシステム構築の知見を蓄積し、それがこの状況下で他の業種に応用できるようになりました。
ニーズの変化という点では、その施設の業務効率化に加え、医療機関においては患者さまの待ち時間を短縮する、院内の滞在時間を短くすることによって院内感染リスクを抑えるといったニーズもあります。ゴルフ場ではチェックインから精算までの自動化・省力化のニーズが大きくなっています。
非対面・非接触のニーズをもう一歩掘り下げると、各業界における人手不足の課題があります。私たちのソリューションは人が担ってきた業務の機械化によってオペレーションを変えることができ、人手不足対策に大きな効果をもたらします。これは全業種に共通する課題であるため、KIOSK端末を主軸とする製品とサービスの市場は今後も継続的に広がっていくと考えています。
ニーズに的確に応えていくためにUSEN-ALMEXにはどのような強みがありますか。
強みの一つは組織力です。当社は、ソリューションの企画、開発、製造、調達、提案、営業、導入、メンテナンスなどを全て自社で行い、全国20拠点超の支店とコールセンターがカスタマーサクセスを支援しています。これら複数の業務を一気通貫で行う会社は稀有であり、幅広い内容の相談を受けることにつながっていると感じます。例えば、単品商品の売る切り型事業モデルの場合、システムを導入した顧客とはそこでつながりが切れてしまいます。その点、当社はメンテナンスなどを通じて顧客の声を聞き続けることができ、それがカスタマイズの相談や新たなソリューションの受注につながっています。
もう一つの強みは総合力です。ホテル向け事業を例にすると、PMSやKIOSK端末が主なソリューションですが、そのほかにも、VODなどのコンテンツサービス、集客施策となる検索サイト(ハッピーホテル)やホームページの受託、ウェブ戦略の支援なども行っています。また、テレビやドライヤーや冷蔵庫など家電品や備品も扱っています。ホテルの利用者視点で見ると、チェックインからチェックアウトまでのあらゆる接点に当社のソリューションがあり、経営者視点では、事業を支えるバックオフィスのシステムから備品の調達まで多様な業務で当社が関わっています。これを実現するのが商品とサービスの豊富なラインナップであり、総合力であると考えています。
共通の目標に向かって
業界の枠を超えた営業活動を展開
多様なソリューションを扱う営業組織にはどのような競争優位性がありますか。
MS本部は、業界カットであった従来の営業組織に横串を通し、横断型で営業活動を展開していくことを目指しています。顧客の情報をもっともよく把握できるのは担当者ですので、これまで主担当の業界のみに目を向けてきた担当者が、ホテル、医療、ゴルフ場などといった多業種についても理解を深めることで、市場動向に関わる情報を広く深く収集できるようになります。その情報を踏まえることでMS本部は顧客と市場に刺さりやすい戦略を打ち出すことができます。
また、当社は北海道から沖縄まで20超の拠点があります。このネットワークも当社の強みです。顧客が課題を感じた時に担当者が物理的に近い場所にいることや、少しでも短時間で現場に駆けつけられることは信頼の向上につながります。顧客との接点が増えることによって多様なソリューションを提案し、顧客の事業の発展に貢献できる機会も増えます。
業界の枠組みを超えて顧客や市場を広く深く理解していくためにどのような取り組みを行っていますか。
まず重要なのはMS本部として本社部門と各拠点(支社支店)が私たちのあるべき姿を示す「ALMEX WAY」を理解し、それぞれの役割を果たし、同じ方向に進んでいく意識を醸成することです。「テクノホスピタリティ」を広めていくことや、各業界における「断トツNO.1プレーヤーを目指す」ことなどを共通の目標とすることで、本部と各拠点の連携を強化できます。
各担当者それぞれが様々な業界の知識習得という点では、MS本部が主体となり、業界を知る、商品を知る、顧客を知るを3つのテーマとして営業系と技術系それぞれの定期的な研修を行っています。また、当社は継続的に新しいソリューションを生み出し、グループ会社からも新しいサービスなどが生まれますので、その都度、不定期の勉強会も開催しながらグループ内シナジーの創出にも取り組んでいます。
2021年から始めたこの取り組みを通じて、社員の間では広く深く学ぶ文化が定着しました。製品やサービスに関する説明などの動画はアーカイブとして保存しているため、必要な時に自主的に学び直すことができますし、新入社員やキャリア採用でオンボードする社員が学ぶ教材としての役割も果たしています。この学習の文化は今後も深く浸透させていきたいと考えています。
新たな業界や製品を学ぶことは新たな事業機会を発見することにつながりますね。
そう思います。前述の通り、非対面・非接触のニーズや人手不足の課題は多くの業界に共通していますので、私たちが貢献できる領域はまだ多くあります。広く深く学ぶことが市場のホワイトスペースの発見につながります。また、グループ会社の製品について理解を深めることで、顧客のニーズと当社の提供価値の両方を起点として事業機会を拡張していくことができます。
ただし、企業のさらなる成長という点では新たな領域の開拓が重要ですが、既存事業を放置して新規事業にばかり注力するのは「鞍替え」にすぎないと考えています。
既存事業も新規事業も、テクノホスピタリティの実現に紐づくという点では原点は同じです。飛び地で事業を生み出すことはできず、半世紀近くにわたって先人が蓄積してきたノウハウを生かしながら、新しい業界でもどんな貢献ができるかを常に考えることが重要かと思います。
私たちが目指すのは、ホテルや医療機関、ゴルフ場などといった施設の利用者に向けたDXによって、顧客である施設の発展を支え続け、同時に、新規事業を既存事業と同じくらい、あるいはそれ以上の規模に育てていくことです。その両輪でさらなる成長を生み出していきたいと考えています。