クリニックにおける医療DXとは?
患者さま目線で考える導入メリットとその事例を解説。
待ち時間の短縮が患者さま満足度の鍵となる。

クリニックにおける医療DXとは?<br>患者さま目線で考える導入メリットとその事例を解説。<br>待ち時間の短縮が患者さま満足度の鍵となる。

背景として近年、医療業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が注目されています。国としても2022年に医療DX推進本部を立ち上げ、全国医療情報プラットフォームの構築を目指しており、意欲的に取り組んでいる姿勢が見られます。
そもそもDXとは、デジタル技術を活用して業務改革を行い、競争優位性を確立することを指します。DXと聞くと、新しい技術の導入し、業務を効率化することをイメージする方が多いかもしれません。しかし、DXを行う目的の中には、経費削減等の経営的視点だけではなく、顧客満足度を向上させることも含まれることを忘れてはなりません。


クリニックに当てはめて考えてみると、診療精度や診療効率の向上などの医療面だけでなく、患者さまの利便性やスタッフのサービスの改良などの医事面もDXを実行する目的になります。


そこで今回はクリニックでDXを行う目的を患者さまの顧客体験(=CX:Customer experience)の向上と設定し、そのメリットや手段、事例を紹介していきます。

患者さま目線で考えるDXを推進する意義とは

クリニックの競争優位性

まずはクリニックが確立できる競争優位性とは何かを考えてみましょう。クリニックにおける競争優位性とは、他のクリニックとは違う自分たちだけの特徴のことを指します。そこで、患者さまから見たクリニックの差別化要素を考えてみると、以下の3つが考えられます。


①医療技術の高度さ
②スタッフの対応の良さ
③待ち時間の短さ

DXの貢献領域

DXが貢献できる領域として、「①医療技術の高度さ」と「③待ち時間の短さ」が該当すると思います。この中でも「③待ち時間の短さ」が最も取り組みやすい項目となるでしょう。患者さまは医療について必ずしも深く理解しているとは限らないため、「①医療技術の高度さ」は評価しにくい項目となります。また「①医療技術の高度さ」についてのDXを具体的に考えて見ますと、AIにやる診断サポートや検査機器の内製化による業務効率化などが挙げられ、機器連携の必要や導入コストの大きさなどハードルが高いものとなってしまいます。
DXの導入の難易度や導入効果の実感しやすさという観点から、「③待ち時間の短さ」は優先的に取り組むべき項目ではないでしょうか?


ここからはCX(顧客体験)改善の観点から、クリニックにおいて患者さまの待ち時間を短くすることを目的として、どのようなDXを実現できるのかを考えていきます。

クリニックにおける患者さま体験

受診フロー

まず、クリニックにおける患者さまの受診フローを整理し、どのポイントで待ち時間が発生しているのかを確認しましょう。患者さまが症状や不安を感じてから受診し、会計・退出までのフローは以下のように考えられます。


1)情報収集①:症状や不安に対応する科目や治療法を調べる
2)情報収集②:該当するクリニックに関する情報を集める
3)訪問   :クリニックに来院する
4)受付   :保険証の提示や問診票の記入など
5)診察・検査:医師による診断
6)会計   :医療費の支払い
7)退出   :帰宅または薬局へ向かう

待ち時間の発生原因

この中で待ち時間が発生するポイントは、ⅰ:4)から5)の間と、ⅱ:5)から6)の間の2つになります。それぞれの原因を考えてみましょう。


ⅰの受付から診察開始までの待ち時間の主な原因は、待っている患者さまの数や問診票の記入、受付が記入内容を登録する時間があるのではないでしょうか?特に新患の多いクリニックでは、保険証の読み取りから患者さま情報の登録という業務に多くの時間が必要となるでしょう。ここでの課題は、患者さま数の管理とカルテへの情報入力の手間といえます。


ⅱの診察後から会計までの待ち時間に関しては、レセプトの計算だけでなく、一人あたりの会計時間の積み重ねが考えられます。クリニックでは、医療クラークがいない施設が多く、診察後のドクターの事務処理や受付の会計処理に時間がかかりがちです。また、料金の支払いは金銭の授受が発生するため、他の業務と並行して行うことはできません。そのため、支払い開始から領収書・処方箋の受け渡しまで、会計業務に時間が取られてしまいます。まとめると、課題としては事務処理や会計業務の複雑さ、支払い対応のシングルタスク性と言えるでしょう。

患者さま視点の待ち時間

次に、患者さま視点からの待ち時間に対する印象を考えてみましょう。業務上の課題解決のためにはCX(顧客体験)の理解が不可欠です。


両者に共通する待ち時間の課題としては、待ち時間の不透明さもその一つでしょう。これは、いわゆる待ち時間の量的な時間ではなく、感覚的な時間への配慮ということになります。一般的に「どのくらい待つのかわからない時間」は長く感じやすいといわれています。大前提として、クリニックに来院する患者さまは何らかの症状や不安を抱えているため、日常の精神状態とは異なることを忘れてはなりません。そのため、待ち時間に対する感覚も平常時とは異なり、敏感に感じてしまうことから、感覚的な時間にも配慮する必要があります。


一方で、患者さまの心理としてⅰとⅱの違いとしては、待ち時間の許容度があります。患者さまは治療や緩和を求めてクリニックに来院するので、診察に対する待ち時間はより許容的だと考えられます。それに対して、診察後は来院目的を果たしているといえる状況のため、待ち時間の許容度はより限定的といえます。

業務上の課題

このように、それぞれの待ち時間について業務上の具体的な課題としては以下の4つが挙げられます。

①患者さま数のコントロール
②カルテへの情報入力の手間
③事務処理や会計業務の複雑さ
④支払い対応のシングルタスク性


また、患者さま視点から見た待ち時間の重要性を理解するために、前提条件として以下の2つも理解しておきましょう。
⑤業界の特性上、患者さまは他の業界より待ち時間に対して不安を感じやすい
⑥会計の待ち時間はより厳しく見られる

DXによる患者さま体験の改善事例

ここでは、前章で示した患者さまの待ち時間に関する各課題に対して、クリニックでどのようにDXを活用できるのか具体的に解説します。

予約システムおよびweb問診の導入

解決課題:①患者さま数のコントロール ②カルテへの情報入力の手間


・予約システム
予約システムは、患者さまが事前に予約して来院できるようにするDXツールです。これにより、待ち時間の短縮が期待できます。また、患者さまが待ち時間を予測しやすくなるというメリットもあります。 予約の受付方法には、時間帯予約と順番予約の2つの方法があります。時間帯予約は診療の枠を時間ごとに指定し、その時間枠に対して予約可能な人数を設定する方法です。これによりクリニックが患者さま数を管理することが可能になります。一方、順番予約は、回転寿司などの飲食店で予約するような整理券をweb上で発行できるようにするものです。順番予約のメリットは、直接来院した患者さまの受け入れと同時に活用できることです。また、予約方法はwebサイト上だけでなく、コミュニケーションツールのLINEからも可能なものもあります。クリニックの患者層や地域の交通手段、診察の平均時間などを考慮し、クリニックの方針に合った方法での導入をおすすめします。


・web問診
web問診は、患者さまが来院する前に自覚症状や患者情報を把握できるDXツールです。予約システムの導入に合わせてwebの事前問診を導入することで、さらに待ち時間を短縮することができます。問診事項の設定については、自由に設定できるものやAIによる自動設定など、クリニック側の運用負担を軽減するものがあります。また、導入の際は電子カルテとの連携も重要です。情報を自動で転送できるのか、手動でのコピーが必要かによって、事務側の負担も変わります。

オンライン診療の実施

解決課題:③患者さま数のコントロール


オンライン診療は、院内での待ち時間をゼロにするためのDXツールです。オンライン診療では、患者さまは待ち時間を自宅で過ごすことができるため、待ち時間中のストレスを軽減し、CX(顧客体験)を向上させます。特に、比較的軽症の患者さまを対象にしているクリニックにおすすめです。ただし、オンライン診療を実施するためには、対応準備として前述した予約システムやweb問診の導入が多くの場合必要となりますので、ご注意ください。

自動精算機および後払いシステムの導入

解決課題:④事務処理や会計業務の複雑さ ⑤支払い対応のシングルタスク性


・自動精算機/セミセルフレジ
自動精算機/セミセルフレジは、会計作業を独立させることができるDXツールです。会計の効率化による直接的な待ち時間の短縮だけでなく、シングルタスク性を解消することにより、その他の事務処理を行う時間も確保できます。精算機には、完全無人で会計業務を全てこなせる自動精算機と、支払い部分だけを無人化できるセミセルフレジの2種類があります。精算機の選び方としては、電子カルテ・レセコンとの連携やキャッシュレス対応はもちろん、設置のためのスペース確保やトラブル時の対応も考慮することがスムーズな導入につながります。


・後払いシステム
後払いシステムは、患者さまの会計時間をなくすことができるDXツールです。後払いシステムの導入により、患者さまは診察・処置が終了した後、処方箋を受け取るだけでそのまま帰宅できるようになります。これにより待ち時間をなくすだけでなく、スタッフが会計処理以外の業務に優先的に取り組むことができるため、サービスの向上も期待できます。選び方としては、患者さまの利便性を重視すると良いでしょう。決済手段の豊富さ、決済日の選択、webサービスの有無など、利便性を確認する観点から選んでみてはいかがでしょうか?

アルメックスの提供するクリニック向けDXソリューション

アルメックスでは、クリニック様向けの自動精算機及びセミセルフレジを提供しています。自立型と卓上型の2種類の製品を揃えており、決済方法も、クレジットカードや電子マネーなどでの精算にも対応しております。また業界シェアトップを誇っており、製品の企画、製造、販売、設置、アフターサービスまで一気通貫で行っています。アフターメンテナンスは土日祝も含め24時間365日対応可能です。クリニックDXを実現するために、ぜひアルメックスの自動精算機及びセミセルフレジの導入をご検討ください

まとめ

医療業界におけるDXの推進は、単なる技術導入や業務効率化だけでなく、患者さま視点でのサービス改善も重要な意義を持ちます。特にクリニックにおける待ち時間の短縮は、患者さま満足度の向上に直結し、その結果としてクリニックの競争力強化と持続可能な経営につながります。予約システムやweb問診、オンライン診療の実施、自動精算機や後払いシステムの導入など、具体的な取り組みを通じて、患者さま視点でのサービス改善を進めていくことが求められます。患者さまの視点を忘れず、より良い医療サービスを提供するためのDXの導入を検討してみてはいかがでしょうか


<参考>
医療DX改革本部
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/index.html/

<執筆者プロフィール>
・執筆者:内田浩樹
・所属:株式会社アルメックス 構造改革本部 企画部
・経歴:
株式会社アルメックスに新卒で入社、入社24年目。入社後の最初の3年間は営業部門で働き、その後新製品導入チームに異動し、10年間開発部門に在籍しました。その経験を通じて会計や会社の仕組みに興味を持ち、経営企画に転身し、7年間の経験を積みました。現在は、新しい取り組みやアルメックスのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を担当する構造改革本部で、自社利用システムの導入と運用管理に携わっています。
・保有資格:
マーケティングビジネス実務検定B級、簿記2級、第2種電気工事士、普通自動車免許、防災士など

・アルメックス公式SNS:
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